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「寄り合い談義・悪文改善法」のまとめ2

 著者:管理人

2014年11月のいちもくセミナー、「宿題」の2つめ、文例2です。

* * * * * *
文例2:何だかゴタゴタした文章。わかりやすく直してみてください。

 この会社の社長は今から50年前に古田氏が初代社長に就任してから今度の山本氏は8代目である。

 (文例は中村明著『悪文』より)

◆宿題回答(順不同)

A この会社の社長は、今から50年前に古田氏が初代社長に就任してから、今度の山本氏で8代目である。


B 今から50年前に古田氏が初代社長に就任してから、この会社の社長は今度の山本氏が8代目となる。


C この会社の社長は、今から50年前に古田氏が初代社長に就任してから今度の山本氏で8代目である。


D 今から50年前に設立されたこの会社。初代社長の古田氏から数えて、今度の山本氏が8代目となる。


E この会社は50年前に古田氏が初代社長に就任、今度の山本氏は8代目である。


F この会社では50年前に古田氏が初代社長に就任し,今回就任した山本氏で8代目となる。


G この会社の社長は、50年前の古田氏が初代、今回の山本氏が8代目である。


H 今から50年前、古田氏が、この会社の初代社長として就任した。今度の山本氏は、8代目となる。


I この会社の社長の山本氏は、初代社長の古田氏が50年前に就任してから8代目になる。

 

 普通に読めばあまり意識もせず読みとばしてしまうような文章かもしれません。

 内容的にどうでもよいから読みとばすという面と、一読してスッと頭のなかに入ってこないから流れていってしまうという側面と、2つあるような気がします。

 文章を生業とするようなネッツの方々なら、まぁいいじゃないかと読みとばすわけにはいかないでしょう。

 文章をくどく感じさせる要素を原文から拾い出してみると、

  • 2度の「社長」
  • 「今から50年前」
  • 「就任してから」以降の話の流れ
  • 「社長は(‥‥)山本氏は‥‥」という二重の主題

 このあたりに問題点がありそうです。

◆2ヵ所の「社長」

 まず2ヵ所ある「社長」をとりあげましょう。

 この身近な文章の中に2度も同じ単語が登場するのはウルサイですね。

 どちらかの「社長」を消すことで、簡単に解決できます。「この会社の社長は」を残して、うしろの社長を消すか、冒頭を「この会社では」などと始めて社長を後ろに持ってくるか。そのあたりが「回答」で工夫されているところです。

 ただ、2つの社長を残したままの人もあり、「就任」を2回使っている人もいます。

◆今から50年前に

 原文に「今から50年前に」とあるために、その表現を活かそうとしたか、そのまま引きずられたか。

 しかしよく考えてみると、「今度の」という言葉がある以上、現在が話の原点になっていることは間違いありません。ならば「今から」とわざわざ述べる必要性はないのではないでしょうか。ただ「50年前に」としたほうが、すっきりするような気がします。

◆就任してから‥‥

 「初代社長に就任してから」の「から」の意味が実はあいまいです。

 原文では時間的長さのつもりで使われていますが、この文を読みながら読者が頭に描くのは、場合によっては「金使いが荒くなった」かもしれず、「業績は向上した」など、関係を示す「から」の意味かもしれません。「してから」までを読んでいるうちは先が予測しづらく、業績の話かななどと考えていた人は、「今度の山本氏は」と続いて肩透かしを食った感じを受けるでしょう。

 ここはやはり、初代と8代の対比を言おうとしている趣旨がわかるような表現を工夫したいところです。

◆二重の主題

 今回の例文でいちばん違和感を抱かせる元になっているのが、主語(のような言葉)が2つもあるというところではないかと思います。

 前半の「この会社の社長は」という文がはっきり終わったと感じさせないまま、「今度の山本氏は8代目である」と続いています。

 基本的には、50年前と現在との対比という内容を、文章構成としても明確に表すことが必要でしょう。

 このあたりの文章の工夫として、回答D、Hでは文章を2つに分けています。また回答Eでは一文ではあるものの読点で区切り、一種の体言止めのような表現を工夫しています。

 注意すべき点としては、これほどの短い文ですから、それをさらに区切った時のぶつ切れ感が出ないかどうか、前後の文脈を見ながら微調整することが必要だと思います。

 

 なお、この文例全体としては、原文の意図が初代社長を基準に考えているのか現在を中心としているのか、あるいはごく客観的な書き方を意図しているのかによって、文章のニュアンスもかなり変わってくるでしょう。

まとめ:文例2から得られた「御教訓」
・同一語句、同一表現の繰り返しを避ける
・複数の意味に取れるあいまいな表現に注意する

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