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第31回 「謝る」というおつきあい

 著者:千葉潮

ここ3週間足らず。毎日、「謝る」ということで人とつながっています。

その理由は、会社が民事再生を申請してしまったこと。
売れ行きが好調になりつつある書籍が数点出てきだし、またようやく自分が関わった企画が世に出るという直前の時期の出来事だったので、悔しくてたまらない、というのが本当の気持ち。
個人として私の責任はないのでしょうが、この仕事に引き込んでしまった人への責任はやはり感じずにはいられません。

ともかくこのところ謝り続けています。
私が謝り続けているのは、外部協力の方、著者、取次会社、印刷会社、もろもろ、もろもろ……。各方面に迷惑が及んでしまっているようです。

さて。
出版業界は何年も連続してマイナス成長しているので、「民事再生」とか「倒産」とかは、取次会社や印刷会社にとっては日常茶飯事になっているようなのですね。
ですから取次会社の対応は非常にマニュアル化されている、そんな気がしました。
また、ある意味マニュアル化されている方が気楽なような感じもします。
取次会社との約定書には、当分の間の出荷凍結と売掛金の保留が、どこの会社ももれなく記入してあります。返品により過払いが生じることのリスクがあるため、売掛金は担保となるのです。
通常の製造業なら、売れる商品を出荷すると会社の利益が生じるわけですから、債権は生じず、取引を停止することは考えられないのですが、これが「返品」を前提に出荷している出版流通では通じないのです。
出荷は停止になるわ、売掛金は入ってこないわでは、ふつうの版元はすぐにやっていけなくなるでしょう。即日全員解雇になることもままあると聞いています。私の働いている会社は取次会社経由ではない取引がメインなので、再生のための作業をすすめながら、通常業務をこなしています。ありがたいことに新規に仕事を依頼してくださるお客様もあります。
(会社が閉鎖されていると誤解している方もおられますが、毎日全員出勤し、モノが差し押さえられる、ということもありません。)

「雨降って地固まる」といいます。
民事再生を申請直後の1週間はそれこそ寝る間もないくらいの忙しさで、ゆっくりと考える余裕もありませんでしたが、最近は(事業の再建計画を立てる準備をする必要もあって)、今後どのように仕事を進めていけばいいのかを、かなり積極的にかつ落ち着いて考えられるようになりました。
そして会う人ごとに謝り倒してはいますが、いきなり深く話すことが出来るという出会いもあり、決してマイナスばかりではありません。(と自分では思っている……)
一緒に仕事をするチーム全員が、会社再建という大きな課題のもとに思いと力をひとつにすること。これもきっとできるだろうと思います。

この十数年フリーで働いている間に、業界のいろいろな場所で働いている友人や知人、仲間が増えました。
「体に気をつけてがんばれよ」
そんな言葉をこれらの何人の方からもいただいたこと、ほんとうに力になっています。

ありがとう。
お礼を申し上げます。

この記事の著者:千葉潮 »プロフィール

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