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第6回「『けものみち』をゆく」

 著者:千葉潮

「勁版会」という勉強会があります。
月1回本にまつわる話を聞き、そのあとは交歓。版元の営業担当が中心でしたが、いまは版元編集やフリー、著者、書店さんなど様々な人が参加しています。
今月はジュンク堂大阪本店の福嶋聡店長のトークでした。福嶋さんは書店論の論客として知るひとぞ知る存在。元々演劇人ということもあり、お話もとても面白いんです。今春まではジュンク堂池袋店の副店長をされており、10年ぶりに関西に帰って来られました。トークライブなどの仕掛人です。

さて、福嶋さんのトークの中で話題になった1冊に、梅田望夫さんの『ウェブ時代をゆく―いかに働き、いかに学ぶか―』(ちくま新書)があり、早速手に入れて読んでみました。
今朝の毎日新聞読書面に著者インタビューが掲載してありました。そこにも記してあるのですが、気になったのは「けものみち」を行くということ。
これってやはりフリーの生き方そのものだわ、と思いました。

長くなりますが、ちょっと引用します。
「(将棋界で生きるということを例に挙げつつ)……いずれにせよ,将棋と将棋以外の異質なものをくみあわせるさまざまな営みにおける「人間の総合力」が試されるのが「けものみち」だ。
遠山四段は早い時期から実名でブログを書いていた(進取の気性に富む、積極性、自己表現欲求)。そして将棋界の今後に強い関心を抱いていた(広い問題意識、高速道路の外の世界への関心)。あるとき私は将棋連盟で連名幹部と職員向けに「将棋の魅力の伝播、将棋の普及のためにネットにどう積極的に関わっていくか」という講演をすることになった。遠山四段は私の講演があるという情報をキャッチし(情報収集力)、数少ない棋士の一人として講演会にやってきた(行動力)。講演終了後に幹部全員がいる場でとても真摯で重要な問題提起をした(積極性、勇気)。翌日には、自分のブログで講演会の感想を書き、ブログのコメント欄を通して私との交流が始まった(スピード感)。将棋が強いか弱いかという「高速道路」的尺度だけで人を見て値踏みするというところはまったくなく(常識)、メールのやり取りを通しての好感度が高く、彼と会ってみたくなった(明るさ、素直さ、人に好かれる性格)。連絡したら、彼はすぐさま私との接点がありそうな棋士五人を選んで声をかけ、夕食会を段取りした(コミュニティ・リーダーシップ、段取り力)。会の翌日には気持ちのいい挨拶メールが届いた(コミュニケーション能力)。その数ヶ月後に予定した次の夕食会の直前に、こちら側の参加メンバーに女性が一人加わったことを知ると、すぐさま女流棋士一人をメンバーに加えようと動いた(気遣い、やさしさ、柔軟性、反射神経的に物事を決める力)。……」(本団112-113頁より引用)。
(  )内が、「けものみち力」の要素だと、梅田さんは言いますが、私も全く同感です。けものみちというのは、大組織に所属し出世するという生き方と対峙する生き方。梅田さんは非正規雇用などに悩む若者たちへのエールとして「けものみち」の歩き方を提示しています。
私がリスペクトするフリー編集者の方々もこれらの能力にとてもすぐれた人々なのです。けものみち力に優れた人は、たとえ組織に戻っても(あるいは入っても)、一喜一憂することなくぶれずに仕事をし、人生を送れるのではないでしょうか。梅田さんに非常に共感するとともに自分自身の「けものみち力」(自己評価するとソコソコなのですが、まだ開発の余地は大いにありそうです)を磨かにゃならんね、と思った次第。一読をおススメいたします。

この記事の著者:千葉潮 »プロフィール

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