「日本語直します」講座・3

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 今回も小学校の教員が書いた文章です。
 意外なことに、いや、そう意外でもなく多くの人が思っているのかもしれませんが、教員で文章の下手な人は非常に多いんです。
 教育関係の出版社で仕事をしていたとき、そのことを痛感させられました。

【文例3】
 少なくない小学校教員はいわゆる受験知識としての「学力」は「低下」したといった実感を持ってはいません。

《分析》
 どのような文脈での文章なのか、少しわかりにくいかもしれませんが、仮に前後が示されていたとしても何が言いたいのか一読理解し難い文章です。

 まず一般的に、二重否定が意味をわかりにくくします。2ヵ所の否定のうち、どちらかを肯定に変えて読みやすくすべきでしょう。

 単語にカッコを付ける場合、つまり文例での「学力」や「低下」という表記は、著者と読者の間に合意が成り立っているものを指し示すという役割を果たしています。
 「いわゆる学力」とか、「例の低下の問題」といった意味合いで用いられます。
 しかし文例では、「いわゆる受験知識としての」という前置きがあり、カッコ内の意味を説明しているわけですから、すでにカッコを使う必要がなくなっています。

 こういった点を考えに入れて修正を試みたのが以下の例です。
 1はなるべく原文をいじらない修正。2〜3へと、原文から遠ざかる修正になっています。

《修正例》
1)多くの小学校教員は、いわゆる受験知識としての「学力」が「低下」したといった実感は持ってはいません。
2)いわゆる受験知識としての学力が低下したといった実感を持っている小学校教員は、多くありません。
3)小学校教員で、いわゆる受験知識としての学力が低下したという実感を持っている人は多くありません。

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