「日本語直します」講座・9

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 2007年の、東京都中野区議会議員選挙 選挙公報からです。

 こんな文章を書くような議員に政治を任せたくないなぁと思いませんか。
 公の文章なので、実名でいきます。

【文例9】

 地方分権時代の今、活力のある自治体を目指す中野区にとって、警察大学跡地から始まった「中野駅周辺まちづくり」はサンプラザ・区役所・中野駅南口など広い地域にわたって計画が進んでいます。
 (市川みのる)

《分析と修正のポイント》
 元の文章が、下手ではあっても論理が通っているなら、添削・修正は難しくありません。
 しかし、論理がむちゃくちゃ、何が言いたいのかわからないという文章だと、直しようがないということになります。
 この文例もそれに近いものでしょう。

 冒頭の「地方分権時代の今」は何を言わんとしているのか。強いて言えば、中野区では街づくり計画が進んでいるということでしょうか。でも、じゃなぜ「地方分権時代」などを持ちださなければならないか、ほとんど無意味というしかありません。
 無意味で不要な飾りをつけることで、なんとなく何かを言った気分になるといった程度のものでしょう。

 「〜にとって」 → 「進んでいます」という流れは文章になっていません。普通「〜にとって」と提示部が来るなら、「AはBである」という文があとに続くことになるでしょう。

 事実関係で言えば、「サンプラザ・区役所・中野駅南口」は中野駅周辺、徒歩数分圏内であって、「広い地域にわたって」いません。中野区全体の1%ほどの、むしろスポットともいえる地域です。

 というわけで、このような意味のない文章は「直す値打ちもない」のです。
 しかしそれではせっかくコラムを読みに来ていただいた方に申し訳ないので、いちおう添削例は示しておきましょう。

《修正例》

 警察大学跡地から始まった「中野駅周辺まちづくり」計画はいま、サンプラザ・区役所・中野駅南口などの地域で進められています。
 (市川みのる)

 余分で無意味な飾りを取っ払いました。
 この著者の言いたいことの中身はこれだけ。あとは虚飾です。

 教訓としては、飾りにごまかされるな、でしょうか。

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