【文例11】
チリ付近の地震による日本の津波の高さはハワイ島の半分程度とされており……
(毎日.jp 2010/2/27)
《分析と修正のポイント》
この文例を採り上げてさばこうというのは、いささかイチャモンっぽく受け取られるかもしれません。
一読して「あれ?」と思う人があるかもしれない反面、気にせずに読み過ごす人もいるでしょう。
ただ、発表媒体はれっきとした毎日新聞社です。プロが書いた文章としてはほめられたものではありません。
イチャモンのポイントはもちろん「ハワイ島の半分」です。
津波の高さがハワイ島の半分。ということは、最高峰マウナ・ケア(海抜4205m)の半分の高さまで津波が来たのか? と読めてしまう文だということです。2000mを超える津波は前代未聞でしょう。
このあたりはよく言われる「日本語の曖昧さ」に係る問題でもあります。
欧米系の言語なら、代名詞をきちんと使って曖昧さを避けるのが普通。
日本語でも、この文例を論理的に書き表すとすれば「日本の津波の高さはハワイ島のそれの半分程度」となるでしょう。
ただ、非常に硬い言い回しになるという欠陥があります。
それからもうひとつのこの文例の問題点は「日本の津波」という表現です。
これではまるで、日本固有の津波、日本独自の津波、のようなニュアンスが感じられないでしょうか。
「の」という所有格の助詞の曖昧さは避けるべきでしょう。
《修正例》
ということで、修正例としては、
チリ付近の地震による日本での津波の高さは、ハワイ島でのそれの半分程度とされており……
「それ」という指示代名詞を嫌う場合には、あえて繰り返しを使っても、この文の場合にはさほど問題はないように思います。
チリ付近の地震による日本での津波の高さは、ハワイ島での津波の高さの半分程度とされており……
またさらに、2つめの「津波の」を略しても、曖昧文にはならないでしょう。
チリ付近の地震による日本での津波の高さは、ハワイ島での高さの半分程度とされており……