【文例12】
私は、学校から帰宅したポストに、卒業後勤めていた設計事務所の大先輩から、一通の便りが届いていました。文面には活動予定が書かれた終わりに、教育はみんなで取り組むべき社会のテーマでしょう‥‥と、書かれていることに、同じ思いを持ちました。
《分析と修正のポイント》
・冒頭の「私」は、おそらく書き手の意識の上での主語なのでしょう。文章の中には述語に相当する部分がありません。
・やたらに「私」を使うなとよく言われます。日本語には主語としての「私」は必要ないという意見もあります。ただし、この「卒業後勤めていた設計事務所の大先輩」は誤読の恐れが大きく、ここにはむしろ「私」を入れる必要があります。「私」を機械的に削除することは危険だというよい見本でしょう。
・便りがポストに届くのは当たり前で、一種の冗語です。
・「書かれたもの」が「文面」だから、「文面に書かれた」は冗語。さらに「書かれている」と同じ表現が続いています。
・「書かれていることに同じ思い」では意味が通じません。ここはおそらく、書かれている内容に関して同感したということなのでしょう。ならば、それが伝わるようにしなければなりません。
《修正例》
ということで、修正例です。
例によって修正の少ない順に3つ挙げてみます。
1)学校から帰宅してみると、ポストに、私が卒業後勤めていた設計事務所の大先輩から一通の便りが届いていました。文面には活動予定が書かれていて、終わりに、教育はみんなで取り組むべき社会のテーマでしょう‥‥とあり、同じ思いを抱きました。
2)学校から帰ってみると、私が卒業後勤めていた設計事務所の大先輩から一通の便りが届いていました。活動予定が書かれており、最後に「教育はみんなで取り組むべき社会のテーマでしょう」‥‥とあって、意を強くしました。
3)ある日帰宅すると、私が勤めていた設計事務所の大先輩から一通の便りが届いていました。活動予定などの文面の最後に、「教育はみんなで取り組むべき社会のテーマでしょう‥‥」とあり、我が意を得た思いがしました。
2)、3)では「ポスト」や「文面」という敢えて必要のない言葉を省略しています。3)では「学校から」も取ってみました。この文章に入っていなくても、前後の文脈でわからせるようにすればよいという考えです。